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突如として降り出した たまたま建物の近くに居た兵はただの幸運で助かるが、たまたま建物の遠くに居た兵はただの不運で骨も残らない。 「ちくしょう! 何てことを!」 コクピット内でアクセルとマイケルが怒りに震えた。 強酸の雨はE・シュクセの外殻を侵食し、下手をすれば今にも内部の機構を破壊して行動不能にしてしまう。その前に早くケリをつけなければならない。 アクセルはトリガーを引いて砲撃を続けるが、依然として卵が張った防御魔法を撃ち破る事は出来ない。常時展開している防御魔法だから、AMチャフで無効化できる可能性が高いが、チャフは強酸の雨によって簡単に流されてしまう。 「こうなったら、俺が接近してチェーンソーを試してみる! アクセル、援護してくれ!」 マイケルが通信機越しに声を張り上げる。マイケルのE・シュクセが現在装備しているのは大型・大出力のチェーンソー・ユニット。理論上、防御魔法を力尽くで突破するのに効果的、とされている武装である。 「了解、こっちは電磁波弾を試してみる。」 刻印系の特殊弾をほとんど撃ち尽くしてしまったアクセルは、別の弾頭による攻撃に切り替えた。次なる手は着弾と同時に強力な電磁波を発生させる電磁波弾だ。これは、コストパフォーマンスが非常に悪く、今積んでいる弾数もかなり少ない。だから、先程までのように弾幕を張るわけにもいかず、慎重にタイミングを見計らう事にした。 卵は強酸の雨を降らせる事に集中しているのか、それともE..G.L.軍を見下しているのか、今は動く気配はない。 「でぇぇぇぇいっ!」 マイケルのE・シュクセが加速をつけて勢いよく卵に向かって突っ込んだ。 それを察知したのか、今の今まで微動だにしなかった卵が、その巨大な眼球をギョロリとマイケルに向ける。 「今だ!」 タイミングを見計らっていたアクセルは、コクピット内でトリガーを引いた。直ちに全砲門が火を噴き、電磁波弾が飛び出す。 卵の眼球がマイケルを攻撃せんと輝いたのと、電磁波弾が防御魔法に着弾したのはほぼ同時。その瞬間に強烈な電磁場によって魔法が撹乱され、五つ展開されていた防御魔法の内二つが掻き消えた。眼球から放たれようとしていた攻撃魔法も電磁場の影響を受けて失敗に終わる。 大地を揺るがす轟音奏でるチェーンソーの切っ先が、弱体化した三つ目の防御魔法を一瞬で砕き、続く四つ目、五つ目も唸りをあげて引き裂く。 「させるかよ!」 強酸の雨を降らせる魔法陣を展開していた水晶を卵自身のほうへ戻そうとしているのをアクセルは見逃さなかった。 アクセルは素早く、宙に浮かぶ水晶の一つを撃った。砲弾が当たって水晶が砕け、発生した電磁場で他の水晶も浮力を奪われて地面に墜落。粉々に砕け散る。 「逃がさねぇ!」 最早反撃する手段がないのか、高速で後退しようとする卵をマイケルは追いかけた。 チェーンソーは既に防御魔法を全て切り裂いて、卵本体の表面に達している。 アクセルはこれでトドメとばかりに、卵の目玉を狙って撃った。砲弾は見事に目玉に直撃、まるで涙を流すかのように紫色の液体を撒き散らす。 最後に、マイケルがチェーンソーを押し付けて深く深く切り込んだ。紫色の液体と一緒に内臓のような何かの器官が辺りに飛び散る。 ――断末魔をあげる事もなく、卵は沈黙した。空気の抜けた風船のように、潰れた卵が地面に静かに横たわる。 「……終わった、のか?」 「……そう、みたい、だな。」 安堵するのと同時に、途轍もない疲労感が二人の肩に圧し掛かった。緊張と恐怖からか、今更ながらに脚が震えていた。仲間たちは勝利に喜んでいたが、二人は兎に角早く休みたくなって、E・シュクセを仮設整備庫に戻した。 『ロフド全市民を代表し、深く御礼申し上げます。このたびは誠にありがとうございました。』 通信機から響く声はシュナール大陸におけるケンタウロスたちの長、82代目ケイロンのものだ。 ケイロンはわざわざE.G.L.軍の通信機を使って彼らに話しかけているのには勿論、理由がある。感謝と説明をする為だ。 『あの巨大な卵、正式にはオンルッカー・フィファというのですが……。アレは周囲の魔力を易々と吸収し、魔法を無効化する、我々にとっての天敵とも言える魔法生物兵器なのです。 あの魔法生物の製造方法は遥か昔に封印されており、我々が知る事は本来あり得ない。仮に製造方法を知ったとしても、並大抵の魔法使いには作れません。あれを作れるのは仙人か神性生物だけなのです。そして製造方法を封印したのも仙人と神性生物たちです。彼らは目的もなしにその封印を解くなどあり得ない。何らかの理由があって、天からあの魔法生物を使わしたのではないかと恐ろしくて反撃出来なかったのです。』 アクセルとマイケルは栄養ドリンクを飲みながら、仮設の休息所でくつろぎながら放送を聞いていた。 仙人に神性生物……説明と言われてもアクセルにはよく分からずじまいだ。マイケルに聞いてみると、意外な事に答えが返ってきた。 「仙人も神性生物もまぁ、一言でいや神様みたいなもんだな。神様の使いかもしれないから、無闇に手出し出来なかったって事だろ。」 マイケルが問いに答えられた事に、アクセルは動揺した。自分と同じくアホ面で、「知らねぇ、俺に聞くな」とかいう返事を期待していたのに、だ。 「マイケル、お前、何で分かるんだ?」 「んぁ? 魂球の生物ってのは地球の古代の伝説に登場してる事が多いんだよ。ほら、ドラゴンとか魔王とか、お前もそういう話なら好きだろ? だから、俺はそこから勉強したんだよ。」 確かに、アクセルも古代の伝説の話などは好きだ。だが、そういう切り口があるとは思ってもみなかった。 「成る程、俺も勉強してみるかな。」 二人がそんな話をしている間に、ケイロンの放送は終わり、代わりにオペレーターの声が響く。命令があるまで待機、との事だったので、二人はそのまま休憩を取る事にした。 |