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「うっ……」 顔を生暖かい湿った何かに撫でられる感触がして、優牙は目覚めた。 「ん……あぁ、ミィか。」 落下の衝撃で破損したのか、檻の中から出ていた相棒が彼の顔を舐めていたのである。 「ありがとう、ミィ。」 相棒の頭を優しくナデナデすると、相棒は気持ち良さそうに「ゴロニヤーッ」と鳴いた。 「あ〜、酷い目にあったな。」 一応、自身の体に異常がないかどうか確認をする優牙。しかし、皮膚はおろか服でさえ焼け焦げたような跡すらない。 (成る程、ドラゴンがエネルギー体なら、それが吐く火炎も「炎に似せた」エネルギーなのか。) 一人で勝手に納得した優牙は、散らばってしまっていた荷物を集めて、再度新居へ……。 「って、ココは何処だ?」 シオンのドラゴンで適当に飛んで来たその場所は優牙には見当もつかない場所だった。 とりあえずは人の声らしき音が聞こえる方向へと歩き始める優牙。 木々を掻き分け草を振り払いつつ、林を進む。 人の声に混じって、何か爆発音や炸裂音のようなものも聞こえる気がするが、あまり気にとめず優牙は進んだ。 そして、視界が開けた先には……。 「 「そうだぞ、この庶民っ!」 「おぅおぅ、3Pってのもなかなかエエなぁ〜。」 そこには、竹箒みたいな前髪をし その三人は何やら 「そぉれ、スキありや!」 男のものと思われる宙に浮いた右手が背後から女の子のお尻目掛けて飛んでいったかと思えば。 「そんなの、ボクには当たらないよ〜だっ。」 女の子がそれを華麗にかわし。 「そこだ、ゴールデン・パウダー・ゴージャス・スプラッシュ!」 少年が謎の掛け声を叫びつつ両手から金色の粉のようなものを、男の頭部に向って放ち。 「甘いで、 頭部だけの男は金色の粉を、頭部を更に真っ二つに分離させてやり過ごす。 まさしく超異常なバトルがそこでは展開されていた。最初は何かテレビや映画の撮影かと思っていた優牙であったが、途中からカメラやスタッフらしき人達がまったくいない事に気付いた。 「…………。」 優牙は、この三人に声をかけようかどうか迷った。何だか関ってはいけない気もするし。 (まぁ、とりあえず人が居たんだから、町の一角であることに変わりは無いか……。) 三人が闘っている場所は空き地のような所で、周りには民家と思われる建物が並んでいる。歩いて行けばこの三人以外にも誰か人に出会う可能性は高い。 そう考えた優牙は、三人を無視してその場を去ろうとしたが……。 「きゃーーっ!」 突如あがった悲鳴に振り返ってみれば、獣の耳が生えた女の子が、薄桃色のパンティーを両手で押さえていた。 「やったでぇ! 荒牧はんのズボンげっとぉ!」 バラバラになって宙に浮いている男が半ズボンを手に持ち、ひらひらさせている。 (あー、そういえばあの女の子、半ズボン姿だったな。) どうやったかは分からないが、男が女の子から半ズボンを奪ったらしい。 「おのれぇ、女子を泣かす外道庶民め!」 少しでも見られないように、とパンティーを押さえてモジモジと恥ずかしそうにしている女の子に変わり、少年が男に向って突撃する。 が。 「ほぉれほれ、さっきまで荒牧はんが履いとった温かさ残るズボンやでぇ。まだ汗の匂いも……。」 そんな事を言いながら、男が半ズボンを少年の目の前でヒラヒラさせると……。 少年は顔を真っ赤にしながら盛大に鼻血を噴出して、その場に倒れた。 「あー! 駆楼都クン、大丈夫!?」 心配した女の子が少年の元に駆け寄る。少年はその視界に女の子のあられもない姿を捉えたのだろう。治まりかけていた鼻血を再度盛大に噴出し、そのまま気絶してしまった。 「おー、今時珍しいくらいの純情ぶりやなぁ。 色々と慣れとかなヤバイでぇ、色々と。」 「ヤバイのはお前だろーーっ!!!」 見るに見兼ねた優牙は、男の頭部めがけて飛び蹴りをお見舞いする。 「ぬっはーっ!」 飛び蹴りの直撃を受け、奇声をあげながら吹っ飛ぶ男の頭部。半ズボンを掴んでいた右手も、その衝撃に思わず半ズボンを手放していた。 「な、何すんねん! 部外者は引っ込んどき!」 頭部だけの男は優牙を睨み付ける。更に優牙の周囲を取り囲むように、彼の四肢が飛び交う。 それに対し、優牙は大きく息を吸い込んだかと思うと……。 「誰かーーーっ! ここに変態が居まーす! 警察を呼んで下さ〜〜〜い!」 と、大声で叫んだ。 「ちょ、待てや! 男なら正々堂々と闘わんかい!」 「うるさい、この性犯罪者! 女の子の服を無理矢理脱がしておいて、正々堂々と闘え? ふざけんな!」 「脱がしたんやない! 「なお悪いわ!」 そんなやり取りをしているうちに、だんだんと人が集ってくる。 更に遠方から土煙をあげるほどの猛スピードで何かが突進してきた。 「ぶわぁっはっはっはっはっはっはっ! 性犯罪者がぁっ! この俺様の昇進の為、逮捕されやがれぇっっ!」 警察官らしき人物が猛烈な勢いで、問題になりそうな事をのたまいながら、こちらに向って来ているようである。 「うっ、ヤバ!」 男は警官の姿を確認すると、そのバラバラなって宙に浮いている四肢をそれぞれ別の方向に飛ばし、頭部自身も何処かへ飛んでいった。 「待てーっ! 止まれーっ! 止まらんと撃つぞーっ!」 目をギンギンに輝かせた凶悪そうな顔の警官は、腰から拳銃を引き抜き……。 「3,2,1……。止まらないなぁ!? よし、発砲ぉっ!」 拳銃を振り回しメチャクチャに発砲しまくった。 それに驚いた野次馬たちは、一目散にその場を離れる。 「待てぇ、俺様の給料アップのためにぃぃぃっ!」 拳銃を全弾撃ち尽くした警官は男の頭部が飛んでいった方向と同じ方向へ駆け出して行ってしまった。 「お、おいおい……大丈夫かよ、この島……。」 走り去る警官の姿が見えなくなるまで、優牙は呆きれて立ち尽くしていた。 そんな優牙を我に返したのは、獣の耳が生えた女の子である。彼女は優牙の服をチョンチョンと引っ張り、自分の存在をアピールした。 「助けてくれてありがとう、お兄さん!」 優牙が振り返ると、女の子が無邪気な笑顔でお礼の言葉を口にする。 「ん? あぁ、大丈夫だった?」 「へーき、へーき! いつもの事だから。」 (い、いつもの事なのか!?) 無邪気にそんな事を言う女の子を、優牙はマジマジと見つめた。 彼女は見れば見るほど動物っぽかった。 所々跳ねたきつね色の髪の毛は腰の辺りまで伸び、大きなクリクリとした瞳は、何故か野生の動物のような輝きを持っている。まだ肌寒い季節だというのに上着は無地のTシャツに下は半ズボンというラフな格好と季節にそぐわない頭に被った麦藁帽子。 本来なら耳がある場所に生えているのは先の尖った獣の耳だし、そのお尻にはふさふさの尻尾が生えている。 何とも不思議な女の子だった。 「ところでお兄さん、知らない匂いだけど、初めて島に来た人?」 (に、匂い!?) 確かに、女の子はその可愛らしい鼻をヒクヒクさせて優牙の匂いを嗅いでいるようである。 「ま、まぁ、今日初めて島に来たけど……。匂いで分かるの!?」 「うん、ボクの鼻は猟犬並みだし、一度会った人の匂いは忘れないよ。」 どうもこの女の子も、シオンやアリスのように何らかの能力を持っているらしい。 それを裏付けるように女の子は語りだした。 「あ、ボクの事怖がらないでね。 こんな姿でも人間だから。」 それまでの無邪気な笑顔から一転、悲しそうな表情で女の子は言う。 彼女もまた優牙のように何らかの迫害を受けたのだろうか。 「この姿がボクのチカラ、『どーぶつえん』。ボクは動物のチカラを自分の体に宿して使えるんだ。」 「あぁ、成る程。それで耳と尻尾が。匂いっていうのも、犬の嗅覚を宿しているからなのか。」 「うん、そだよ。」 今度は悲しそうな表情から無邪気な笑顔に戻る女の子。 「あ、そうだ。ちょっと聞きたい事があるんだけど……。」 優牙は今日から自分が住む事になる新居の場所を女の子に尋ねた。地図が無いので説明に困っていた優牙であったが、女の子はすぐにその場所を察したようだ。 「だって、ボクのお隣だもの。」 成る程、すぐに察するワケだ。 「へぇ〜、でもお兄さん、あんなトコロに住むなんて物好きだね。」 「も、物好き?」 「うん、あそこはね……」 女の子が何かを言い掛けた時、別の声が二人の注意を引いた。 「こら、庶民どもっ! この僕を無視して話を進めるんじゃないっ!」 声の主は白い学ランのような服を着た銀髪の少年だった。 (あ、そういや鼻血を吹いて気絶してたんだっけ。すっかり忘れてたな。) 「ありゃりゃ。駆楼都クンのこと忘れてたよ。気が付いたんなら良かったね。」 忘れていた、という女の子の言葉が気に障ったのか、少年は顔を真っ赤にして怒った。 「この馬鹿庶民めっ! 財布も寒ければ頭も寒いのか!?」 「ボクの頭は寒くないよぅ。髪の毛フサフサだもん。 それより、どっか怪我してない?」 「今更怪我の心配をするなっ」 怒る少年に対し、女の子は到ってマイペースのようである。 「あ、まだ鼻血がついてるよ? 舐めよっか?」 そんな事を言いながら、女の子は半開きの口を少年の鼻に近付け……。 「馬っ鹿! そんな事するなぁ!!!」 別の意味で顔を真っ赤にしながら、少年は女の子の顔を引き剥がす。 (行動まで犬みたいだな……。) 二人のやり取りを見ていた優牙は、密かにそんな事を考えた。 「ところで、この人は誰だ?」 少年は優牙に視線を向ける。 「あっ、えぇと。お兄さん、お名前は?」 (そういえば、自己紹介してなかったな。 家も隣だって言ってたし、キチンと自己紹介しておくか。) そう思った優牙はゴホンと軽く咳払いをした後、自己紹介をする。 「夢路優牙、今日からここの高校二年だ。」 「ボクは で、こっちは同じクラスの……」 「 「もぅ、駆楼都クンっ。嘘は良くないよ! 超上流階級って、ボクたちよりちょっとお金持ちなだけじゃない。それにこのアクセサリーも全部偽物だし。」 恋は駆楼都が身に付けている高級そうなシルバーアクセサリーの一つを手に取ると、ぎゅっと握った。すると、そのシルバーアクセサリーは光の粒子となって拡散消滅してしまう。 「何を、この貧乏人めっ! 荒牧はいっつも同じ服しか着てないじゃないか!」 無邪気そうな女の子と生意気そうな少年の凸凹コンビの言い争い。それは優牙が割ってはいるまで延々と続いた。 結局、優牙が新居に辿り着いた時には既に夕方であった。 駆楼都と別れ、恋に案内をして貰い、辿り着いた場所にあったのは……古びた木造の物置のような一軒家。 正面から見て右手側には神殿のような邸宅がデデーンと建っており、逆に左手側にはこれまた古びた小さなアパートのような建物がほとんどくっ付くように建っている。 「確かに、ここに住む俺は物好きかもしれないな……。」 「ボクはお隣のアパートに住んでるんだけど、そこの物置だったのを土地ごと買い取ったんだって。」 優牙の両親の死は結構突然だった。 時間的余裕はあまり無かったようなので、焦ってこういう土地を買い取ったのだろう。 「ま、まぁ、雨風が防げて寝るところがある場所だけマシかな。」 そういう優牙の顔は引きつっていた。 「やぁ、夢路クン。遅かったじゃないか。」 ふいに右のほうから朗々とした威厳のある声が聞こえる。 声の主に、優牙は見覚えがあった。 金髪をオールバックで固め、鋭い光を宿す 「アルさん、お久しぶりです。」 声の主の名はアルフレッド・K・ラドクリフ。 3年ほど前から優牙の元に現れ、島のことを彼の両親と話していた人物であり、両親が死んだ後の事を色々と世話をしてくれた人物である。 「こんにちわ、アル 恋はアルフレッドの事を小父様と呼んだ。確かに、彼のその雰囲気は小父様と呼ぶに相応しい感じがする。 「おやおや、これは荒牧クンもご一緒だったのか。 成る程、 そう言ってアルフレッドは恋の頭を撫でる。 当初はアルフレッドが優牙を案内する予定だったのだが、急用が入ったとかでキャンセルしていたのだ。 「夢路クンも、大変すまなかった。どうしても外せない用事だったんだ。」 「いえ、もういいですよ。こうやって家には着いたんですし。」 頭を下げるアルフレッドに対し、優牙はそれを止めるように言う。 「それでは、後は私がご案内しよう。」 アルフレッドのその一言により、恋はアパートへ。優牙はアルフレッドに連れられて新居へ入った。 |