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優牙の両手には食材が詰まったビニール袋がぶら下がっている。 それだけでなく、シオンや恋も買い物袋を持っている。 「いやぁ、いい買い物が出来た。」 荷物は重いが、優牙の顔はほくほく顔だ。 優牙は料理の腕に比例して、良い食材を見極める、すなわち目利きにも多少自信があった。 その目でもって良い食材を選んでいると、いつの間にかお店の人達に気に入られ、色々とサービスして貰ったのだ。 しかも恋が一緒に居ると、「恋ちゃんになら、サービスだ!」と更にサービス。シオンと並んでいれば「可愛い譲ちゃんにサービスだ!」と更に更にサービス。「両手に花たぁ、羨ましいなニィちゃん! これも持ってけ、ドロボー!」と更に更にさらにサービスしてくれた店主も居る。因みに「可愛い譲ちゃん」の時は、近くに居た主婦たちが、「あら、私もキレイでしょ?」と店主にサービスを求め、一時混乱状態に陥っていた。 そういった小さな町ならではの人情味溢れる光景に、優牙は何だか嬉しくなっていた。いい意味で人と人とのつながりが存分に発揮される瞬間である。 そして同時に優牙は、この町が「能力者が集まる町」であると、再認識していた。 八百屋・魚正の店主、魚正さんの能力は『一定空間内の温度と湿度を調節できる』その名も「冷蔵庫」。能力名の通り、取れたての新鮮な野菜をその能力でもって保存し、店先に並べている気のいいおじさん。 魚屋・酒井の店主は『物体を空中に固定する』「見えないまな板」の能力でもって”マグロの空中解体ショー”なんて事をしている強面だが優しいおじさんだ。 肉屋の吉永奥さんは『目からレーザーを放つ』「レーザー」の能力で肉を文字通り目の前で切り分けてくれた。 優牙は直接買い物をしたわけではないが、他にも花と会話が出来る花屋さんや、米粒の数を瞬時に言い当てる米屋さんが居るらしい。 店員も能力者なら買い物客も能力者である。びよ〜んと腕が伸びて、遠くから品物を取る人も居れば、凄いスピードで動く人、遠くの物を自分の方に引き寄せる人など、自分の能力を買い物に利用している人が多く居た。 「能力は遺伝するの。親が能力者なら子供も能力者の可能性が高いわ。特に能力コンセプトは親に影響を受ける場合が多いらしいし。」 とはシオンの弁。 「じゃ、そのうち世界中が能力者で溢れかえったりするのか?」 優牙のその疑問は最もだが、二人とも専門家ではないので分からなかった。 「そういえば、この材料で何を作る気なの?」 両手にぶら下がった買い物袋をチラリと見てからシオンが問う。 「う〜ん、これだけあれば高級フレンチから和食まで大概の物は作れるんだけどなぁ。」 「それじゃぁ、ボク、玉子焼きがいいっ!」 最初は遠慮して固まっていた恋も、既に上機嫌になって慎ましいリクエストをする。 「玉子焼き……。成る程、シンプルながらも奥深い、料理人の腕を試す料理だな。よし、その挑戦、受けて起とう!」 「別に挑戦してるワケじゃないよ……。」 そんな会話をしていた時、ふと恋が歩みを止めてキョロキョロと周囲を見回す。 「どうしたの?」 シオンの質問にも答えず、鼻をヒクヒクさせ耳をピクピクさせ、まるで肉食動物を警戒する草食動物のように周囲を確かめている。 「……さっきからずっと誰かが後をついてきてる。」 一通り周囲を見回した恋は、ポツリとそれだけ言った。 優牙も先程からこちらを見続ける視線に何となくだが気付いていた。 「確か、花屋の近くだったか? 妙に誰かに見られているような感じがしたのは。」 「花屋……近くにあるのは、金沢不動産……。」 恋は何かに気付いたのか、スタスタと今来た道を後戻りする。その視線の先には……恋と同じくらいの身長の像が立っていた。しかも、場違いな事にその像は全身金色の輝きを放っている。 「ねぇ、駆楼都クンでしょ?」 恋はその金の像に向かって問い掛けた。 すると、金の像は見る間にその金色の輝きを失い、逆に生命の輝きを放ち始めたではないか! 「フッ、よく分かったな貧乏庶民。この前は金に変化したこの僕と、別の金の像との見分けが付かなかったクセに。」 「簡単だよ。この前と違って、金の匂いを辿ればいいだけだもん。駆楼都クンの匂いは覚えてるしね。」 駆楼都、と呼ばれた少年に、優牙は見覚えがあった。引越し初日に恋と協力して星夜と戦っていた同学年の派手な少年である。 その少年、金沢駆楼都は今回も派手な格好をしていた。白ランと呼ばれる白い学ランを着用し、指、手首、耳たぶ、首には様々な 「やぁ、庶民の皆さん。こんにちは。僕は超上流階級の 金沢駆楼都は、キザったらしく髪をかきあげニヤリと唇の端を釣り上げる。 「で、ボクたちの後を付けたりして、何のようなの? 駆楼都クン。」 恋の質問に、駆楼都は顎に手を当て何事かを考えているような仕草をする。 数秒間そうした後、駆楼都は何事も無かったかのように「ただの散歩だ」と答えた。 「って、それ今考えた言い訳だろ。」 「ななな、何を言い出すだ!?」 口調は変化し冷や汗を掻き手足の動きはぎこちなくなる。 これ以上無い、と言う程激しい動揺を見せる駆楼都。駆楼都という少年は嘘がつけない正直者……いや、純情過ぎるのだ。 「それで? 何の用なの、駆楼都クン?」 結果的に嘘をつかれた形になった恋が、再度同じ問いを駆楼都に問い質す。 が、その問いにも駆楼都は視線を逸らして「散歩だ」と答えた。 「もぉ! 嘘はよくないよ、駆楼都クン! ボクは嘘がある程度分かる事くらい知ってるでしょ!?」 恋の嗅覚は猟犬並み、聴覚も非常に優れている。だから、僅かな汗や呼吸・鼓動の乱れから相手の感情をある程度見抜く事が出来るのだ。しかし、駆楼都に限って言えば、誰が見ても見抜けそうな程嘘が苦手なのであまり意味は無かったりする。 「び、貧乏庶民にいちいち答える暇は、このボクには無いんだ!」 嘘を完全に見抜かれた駆楼都は顔を真っ赤にして半ば叫ぶような大声を出して喚き散らした。 「貧乏庶民の獣娘め! 買い物なんかせずにお前は雑草を食ってろ!」 「言ったなぁっ。駆楼都クンのチンチクリン!」 「チ、チンチク……。よくも言ったな、この馬鹿女!」 チンチクリン……ちんまい、ちびんしゃい、てっとり早く言えば小さい事を表す言葉である。駆楼都は恋と同じくらいの身長だから、同年代の他の男子よりは背が低いのを結構気にしているのだ。 「あ〜、オホン。二人とも落ち着いて。」 ヒートアップする二人をクールダウンさせようと、優牙が 「ちょっと黙ってて!」 「ちょっと黙ってろ!」 二人から同時に拒否申請されて、優牙の出番は終わった。 「そういや、この前の決着がまだついて無かったな! この場でこの金沢駆楼都の方が強いという事を証明してやる!」 「いいよ。どーせ、ボクが勝つモンね!」 二人の空気が更に険悪なものになる。 流石に見兼ねた優牙とシオンが強引に割って入ろうとしたところ……。 「 と、駆楼都が二人に向かって指を鳴らすと――なんと、二人の靴が突然 「な、何だこれ!?」 更に靴だけでなくズボンあるいはスカートが見る間に重くなり、銀色の輝きを放ち始める。最終的に二人の服は、僅か数秒の間に下着も含めた服が全て銀色の重い"何か"に変化してしまう。 「う、動けない……!?」 更にその"何か"は、非常に堅固で、 銀色で重くて堅固な"何か"。 「庶民には そう、二人の服は銀に変化してしまったのだ。 「き、聞いた事があるわ。自分自身や非生物を金属に変化させる能力者が居るって。」 銀の服の重みに表情を歪めながらシオンが呟く。 そんなシオンを見て駆楼都はフフンと鼻を鳴らして尊大に胸を張った。 「そう! この超大金持ちの金沢駆楼都の能力はその名も『ザ・グレイテスト・ゴージャス・レアメタル』! 物体を |